コラム

実務補習と実務従事の違い

中小企業診断士が読みたい雑誌(1)
戦略経営者
中小企業診断士が読みたい雑誌(2)
日経トップリーダー
この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

こんにちは。

ここ最近、「実務補習」をテーマに記事を書いてきましたが、そろそろ旬な時期も過ぎてくるので、これで実務補習ネタも最後にしたいと思います。
今日は「実務補習」と「実務従事」の違いについてまとめておきたいと思います。

言葉の定義

まず言葉の定義からです。

実務補習というのは、中小企業診断士試験合格者が資格登録をするために行われる実習制度で、国の登録機関が行う実習を指しています。
現在、登録されている機関は2社あって、「一般社団法人中小企業診断協会」と民間会社1社です。

一般的な認識としては、実務補習は診断協会が実施するものというイメージではないでしょうか。
ですので、このあと記載する実務補習は診断協会実施のものを想定して記載します。

一方、

実務従事は、公的なお墨付きなどはなく様々な企業や団体が資格の登録・更新に必要な診断実務の場を提供するために実施しているものになります。

中小企業診断士の資格登録には、

「中小企業診断士第2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録を行うことができる」

とありますので、実務補習を受けても実務従事を受けても合計で15日以上行えば登録できます。

2つを組みあわせて、実務補習で5日間、実務従事で10日間、診断実務に従事して登録することもできます。

よく登録のためには実務補習に参加するしかないと思ってました・・・という方と出会うのですが、そんなことはありません。
実務補習に参加しなくても、実務従事や自ら中小企業の社長を見つけて支援することで実務ポイントを取得し登録することもできますので、ご注意ください。

実施内容

次にそれぞれで実施する内容ですが、実務補習は一定のルールの下で行われますので、1チーム5名程度で1社の支援を行い、作成する報告書のフォーマットも厳しく決められています。
また、実習のテーマは「総合診断」ですので、財務・人事・営業・在庫管理・生産工程…など機能別に分けて幅広く現状分析・課題設定・視索提言などを行います。
業種ごとに必須で行わないといけないテーマが決まっているので、そこを外した報告書はNGとなります。
結構な分量を書く必要があるため、本質的な支援以外のドキュメント作成に多くの時間を割くことになります。

これは全国同じルール。
進め方などは指導員ごとに変わりますが、やるべきことは原則変えられないので、どこで受けても同じ経験をすることができます。

一方、実務従事は主催する企業・団体によってマチマチです。
参加者は少人数の場合もあれば、数十人という大人数で行われる場合があります。
内容も総合診断というよりは、何かに特化したテーマで支援することが多いです。
たとえば、弊社が実施する「CFJの実務従事サービス」では、マーケティング支援や経営革新計画策定支援など、募集の段階で明確な支援テーマを掲げて実施しています。

メリット・デメリット

次に、それぞれのメリットとデメリットを整理してみました。

実務補習のメリット

  • 中小企業診断士として1度は経験しておきたい総合診断のスキルが学べる
  • 指導員は一定の要件のもと登録されているため安心できる(指導員のレベルが著しく低い場合もありますが…)
  • 毎年、開催時期が決まっていて、いつ開催されるのか予定が立てやすい
  • 実習先企業は一定の規模があるところなので、支援のやりがいはある。(最低でも従業員4名以上が実習企業の要件となっている)
  • 診断士登録の手続きが楽(必要書類を出せば協会がやってくれる)

実務補習のデメリット

  • 平日日中帯に開催されるため会社を休む必要がある。
  • 1回の拘束時間が長い(9時~17時は拘束される。長引くことも多々)
  • 指導員、支援企業などが選べない。蓋を開けてからのお楽しみ。
  • 1回でも休むと実務ポイントが取得できないなどルールが厳しい
  • 支援テーマが広すぎて、企業の本当のニーズにあった提案がやりにくい

実務従事のメリット

  • 色んな会社・団体がやっているので機会は多い
  • 平日夜や土日開催など会社を休まないで参加できるものが多い
  • 申込み段階で支援企業やテーマ、指導員の概要がわかるため、興味のあるものを選びやすい
  • 無料のもの、低価格なものなど1実務ポイント当たりのコストパフォーマンスが高いものが多い
  • 各社が特色を出して提供しているので、インプットとアウトプットがバランスよく提供され、スキルアップにつながるものが多い
  • 企業のニーズにマッチした提案がやりやすい
  • テレビ会議で参加可能など工夫されているサービスが多い

実務従事のメリット

  • 色々な機会がある分、利用者側が目利きをして選ばないと質が担保されない(1社に対して参加者数十名でヒアリングするなど、あまりスキルアップにつながらないものも多い。)
  • いつ開催されるのかわからないものも多く予定が立てにくい
  • 診断士登録の手続きをすべて自分でやる必要がある。(中小企業庁への提出までを自らで対応する必要がある。)
  • 開催が東京など都市部に偏っていて、地方の方は参加しにくい

このように、それぞれメリット・デメリットがありますので、うまくご自身のニーズに合う形で検討してみてください。

まとめ

最後にそれぞれの特徴をまとめておきたいと思います。

実務補習実務従事
利用者試験合格後の登録前の方試験合格後の登録前の方
登録後の更新の方
目的資格登録資格登録
資格更新
内容総合診断個別課題の支援
成果物分量多い
指定フォーマット
少ない~多い
フォーマット自由
実施期間中の負荷高い低い~高い
実施日平日あり
会社を休むのは必須
土日開催、平日夜開催など
値段普通安い~高い
事前選定
(企業・指導員など)
不可可能
主な提供先中小企業診断士協会CFJの実務従事サービス

The following two tabs change content below.
アバター
中小企業診断士 2012年04月に中小企業診断士登録、2013年04月に独立。2014年10月に株式会社コムラッドファームジャパンを設立し代表取締役に就任。 会社経営に加えコンサルタントとして中小企業の売上アップを支援するとともに、稼げる中小企業診断士の育成に力を入れる。TACにて中小企業診断士講座の専任講師も担当(2022年に10年間従事し卒業しました。)している。個人ブログ「神保町で働く中小企業診断士&社長のブログ」もすごくたまに更新中!

関連記事

  1. 実務補習にむけて…

  2. 中小企業診断士1年目の歩み方:実務従事って何・・・?

  3. 中小企業診断士1年目の歩み方②

  4. 中小企業診断士試験合格、さてその後は?

  5. どうすれば実務補習の指導員になれるのか

  6. 中小企業診断士1年目の歩み方①

  7. 実務補習と2次試験の違い

  8. 実務補習が変わります。

人気記事